インプラント
治療のご案内
インプラントとは
歯を抜いた際に、その失った部分を補うための治療法の一つです。そもそも「インプラント」とは、何かを「埋める」ことを意味する言葉で、医学の世界では整形外科の人工関節などを骨に埋め込む治療で多くの実績があります。歴史的に人間は、失った自分の体の一部を何かで補うことを考え続けてきました。古い時代から既に貝殻や、動物の歯や骨を「インプラント」して歯の代わりをつくっていた事実が報告されています。以後最近まで、金、サファイア、鉄、ステンレス、アルミニウムなど様々な材料が研究されましたが、いずれも良好な結果は得られませんでした。
ところが、1952年、スウェーデンのブローネマルク博士が実験中チタンの板に骨が結合する現象を偶然発見しました。研究を重ねた結果、革新的に安全性の高いインプラント治療が発達し、現在のインプラント治療が確立したのです。1965年、ブローネマルク博士によって治療された最初の患者さんは、治療後40年近く当時のインプラントを使用して、最近亡くなりました。現在、ブローネマルクインプラントの20年累積残存データとして発表されているものには、1983年から85年にかけて治療された報告で、上顎90.0%、下顎92.3%というデータがあります。また、10年以上のデータでは96%という報告や、5年以上のデータでは98%以上という報告もあります。インプラント体自体も日々研究を重ねて改良され進化していますので、その残存率は飛躍的に伸びています。しかし、治療後の清掃状態、咬み合わせなどによって、インプラント治療後の経過は大きく影響されますので、日頃のお手入れや定期検診など、患者様自身のケアが重要になる点も、ご自身の天然歯に近くなります。
インプラントのメリット
日常生活でのメリット
インプラントは入れ歯と違い、骨にしっかりと固定されていますので、力をかけて硬い食べ物もしっかりと咬むことができます。噛みしめることで出てくるお食事の美味しい味を損なうことはありません。また、お食事のときに食べ物が入れ歯の下に入り込んで痛い、嫌なにおいがする、などの悩みもありません。
また、入れ歯のように、他の歯にかけた金属が見えることもありませんし、取り外して清掃する必要もありません。お食事中、おしゃべりを楽しんでいる最中にも、入れ歯が外れることや、とめ金が見えることを気にする必要がなくなります。
歯の健康についてのメリット
失った歯の両側を
削るブリッジ治療
これまで失った歯を補うためには、周囲の歯がその負担を担う方法しかありませんでした。基本的にインプラントは、歯を失った部分のみを治療する方法なので、他の歯を削ったり、過剰な負担をかける必要はありません。
また、歯を失った部分の骨がやせません。通常ならば歯を失った後、歯の根を支えていた骨は力の伝達がなくなるためその役割を失い、ある程度の細さになるまで自然に吸収し、やせていきます。ブリッジにした場合にもダミーの歯の下の骨はやせていきますので、次第に食べ物が詰まる、舌触りが悪くなるなどの症状が出てくる可能性があります。インプラントならば、咬む力をしっかりと骨に伝えてくれますので時間が経っても骨はやせません。
インプラントの構造
インプラントの構造は下記のように、上部構造体・アバットメント・インプラント体(フィクスチャー)の大きく3つの部位に分けることができます。
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上部構造体
インプラント冠(クラウン)、インプラントブリッジなど素材は様々なものがあります。セラミックを使ったものが一般的ですが、咬み合わせの特に強い方、歯ぎしりのある方などでは咬む面を金などの金属で覆ったものを利用することもあります。
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アバットメント
設計によって様々な種類があります。上部構造を「スクリューで固定する」「セメントで固定する」など、固定方法によっても利用するアバットメントが異なります。
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インプラント体(フィクスチャー)
当院では、骨のサイズ・量・形態に合わせて様々な種類と形状のインプラント体を準備しています。
インプラント治療に適した病状
骨の量
インプラント治療は、まず歯を支える土台を作るところから始まります。建物で例えれば、柱を立てるところから始まるわけです。柱は土壌のしっかりした場所に立てることが鉄則であり、壊れない建物を建てる基礎となるでしょう。インプラントも同じです。インプラント体を立てる土壌はつまり、骨。骨のしっかりとある部分に立てるのがより安全性の高いインプラントです。では、具体的にどのようにして骨の量を検査するのでしょうか。第一の手掛かりは、大きなお口全体が写るパノラマレントゲン写真です。この2次元的なレントゲン写真で、ある程度のおよその骨の量がわかります。
第二の手掛かりは、CT画像です。骨を縦に輪切りの状態で検査することができるので、骨の幅や、内部の構造まで、詳しく診査することができます。2次元的なレントゲン写真で情報が不十分である場合には、CT撮影を行って診査します。
万が一、骨が少なくなっていた場合でも、骨の移植や、新しい治療方法など、先進の技術が適応できることが多くあります。しっかりと診査をして、どのようなインプラント治療が適しているかを診断させていただきます。
インプラント治療に適さない症状
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顎の骨の量が少ない方
インプラント治療は、歯茎の下の顎の骨に直接インプラント体を埋め込む手術を行います。そのため、顎の骨の量が少ない方は、骨移植などの処置を併用しなければならない場合があります。
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妊娠中の方
術後の投薬や、レントゲン撮影を避けたい場合には、出産後の落ち着いた時期にインプラント治療をした方がよいでしょう。
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全身疾患のある方
出血を伴う処置もありますので、糖尿病や高血圧などの慢性疾患がある方は良好な状態にコントロールされていることが条件になります。その他、全身的なご病気がある場合にはかかりつけの医師と相談の上、インプラント治療を考える必要があります。
他の歯に大きな虫歯や
根の病気がある方、歯周病の方
インプラント治療に悪影響を及ぼす可能性がある、他の歯の病気がある場合には、その歯の治療を優先する場合があります。インプラントは骨に支えられるため、骨が吸収する病気である歯周病は大敵です。インプラントのすぐ横に重度の歯周病の歯があれば、インプラントの周囲の骨が一緒に減ってしまい、インプラント周囲炎という病気になります。歯根の先に膿がたまっている歯も同様で、膿のふくろが大きくなれば、インプラントに影響してしまいます。
インプラント治療を受ける際には、歯科医院で歯牙と歯周組織のチェックや治療を受け、日頃からきちんとした歯磨きを心がけましょう。もちろん、残っているご自分の歯を少しでも長く使っていくためにも、日頃の清掃は最重要ポイントです!
喫煙される方
喫煙は歯周病だけでなく、インプラント治療にとっても大敵です。喫煙による血管収縮作用によって、口の中の粘膜内の血流が阻害され、組織全体の免疫力が下がります。従ってインプラント治療直後の傷の治りが悪かったり、歯周病が治らない、インプラント周囲炎になってしまうなど、インプラント治療の失敗につながる悪影響がたくさんあります。もちろん、残っているご自分の歯を少しでも長く使っていくためにも、タバコを吸われている方はこれを機会に、禁煙にTRYされてはいかがでしょうか。
以下の方はインプラント治療
ができません
ができません
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顎の骨の成長が終わっていない年齢の方、概ね16歳以下の方
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歯磨きなどの日常の清掃が充分にできない方
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チタンへのアレルギーを持っている方
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アルコール依存症の方
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歯科医師と意思疎通ができない方、精神的に問題のある方
インプラント費用
インプラント費用は、おおよその目安として、一本あたり30~50万円前後での価格帯です。(内訳は、インプラント本体が1本あたり約20万円、加えてインプラントの上につけるアバットメントと人工歯の料金、こちらもおおよそ20万円前後が必要)インプラント治療には基本的に健康保険が適用されませんが、場合によっては、医療費控除の対象になることもあり、費用軽減となるケースもあります。症状や治療方法により負担する費用額は異なりますので、まずはご相談下さい。
インプラント治療は適切なアフターケアを行えば、「第2の永久歯」として、生涯にわたり機能しますので、一概に「高い」「安い」とは言い切れません。一時的な出費よりも、インプラント治療によって得られる価値に目を向けてください。問題はインプラントによってどれくらいのものが得られるかということではないでしょうか。
診断・治療計画 片顎 1-2歯欠損 | 30,000円 |
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診断・治療計画 片顎 3歯以上欠損 | 50,000円 |
サージカルガイド | 80,000円 /片顎 |
インプラント埋入手術 | 150,000円 /1本につき |
フィクスチャーおよびアバットメント | 80,000円 /1本につき |
フィクスチャーおよびジルコニアアバットメント | 100,000円 /1本につき |
2次手術 | 30,000円 /1歯につき |
即時荷重用 仮歯 | 30,000円 /1歯につき |
最終補綴物装置 金属鋳造冠 | 50,000円 /1歯につき |
最終補綴物装置 メタルボンド | 100,000円 /1歯につき |
最終補綴物装置 オールセラミック | 130,000円 /1歯につき |
GBR 人工骨のみ | 50,000円 /1本につき |
GBR 人工骨、メンブレン使用 | 100,000円 /1本につき |
GBR 自家骨移植 | 300,000円 /1部位につき |
ソケットリフト | 50,000円 /1本につき |
サイナスリフト | 300,000円 /1部位につき |
静脈内鎮静法 | 80,000円 /1回につき |
※上記費用には別途消費税がかかります。
治療の流れ
ここではインプラント治療の基本的な流れを詳しく見ていきます。インプラント治療は一度の手術のみではなく、手術後の治癒期間、仮歯の作成など、いくつかのステップがあります。
しっかりとした手順を踏むことで安全性も高まり、治療後も快適な生活が可能になります。
基本的な流れ
診査・診断
インプラントを埋め込む顎の骨の量や質、形を診査するため、お口の中の型を取ります。
レントゲン撮影、また骨の状態によってはCT撮影を行います。
一次手術
麻酔をしてから、骨を削りインプラントを埋め込み、蓋を取り付けて粘膜を閉じます。
1回法の手術の場合は大きめの蓋を取り付け、お口の中にその蓋が見えるようにして手術を終了し、2次手術は行いません。
二次手術
2回法を選択した場合には、治癒期間終了後粘膜を開けて、大きい蓋に取り替える2次手術を行います。1回法の場合には不要です。
仮歯装着
治癒したところで、仮歯を作り、実際に使用していただきながら形態や装着感などを確認します。
かみ合わせや強度に違和感があれば、主治医と相談し、本歯の製作に向けてデータを集めていきます。
最終的な歯の装着
仮歯の装着で得た情報を基に最終的な本歯用の型を取り、歯並びや色をチェックして作成します。
作成した本歯を装着し、治療が完了します。
メインテナンス
治療が終わった後も、定期検査をしながらきちんとケアしていきましょう。
手術方法
インプラント治療では、1回法と2回法と呼ばれる方法がこれまで行われてきています。
骨量のある方とない方で術式が異なってきます。
インプラント治療の手術方法
1回法
1回法は、インプラント体を埋める手術のときに、大きめの蓋(キャップ)取り付け、お口の中にその蓋が見えるようにして終了します。
2回法
2回法では、手術の時には小さめの蓋をして歯肉の中にインプラントをしまっておいて、そのまま治癒させます。治癒期間終了後に、再度歯肉を少し切って、大きめの蓋に交換する手順が入ります。ですから、この方法を2回法と呼んでいます。
1回の方が手術が少なくて良いではないか、と思われると思いますが、骨の移植が必要であったり、細菌感染のリスクの高い場合などにはこの2回法を用いる方が安全性が高くなります。最近では、診断技術や治療技術、器械類の発達によって、骨の状態が良い場合には手術の当日に仮歯を装着してしまう方法も可能です。
骨量の違いによる手術方法
骨量のある方
インプラント体を埋める骨が元々ある方は、診断をした後そのままインプラント埋入手術が受けられます。
最近では、CTなどの診断技術の向上、器械技術の向上によって以前には不可能と言われていた方でも、そのままの既存の骨に治療することが可能な場合も多くなっています。また、通常の方法に加えて、骨の状態が良い場合には手術の当日に仮歯を装着してしまう方法なども可能です(即時負荷)。こちらも適応できる方、できない方がいらっしゃいますので、よく説明を受けてください。
骨量の少ない方
骨の少ない、そのままではインプラントを埋めることのできない患者様には、骨の移植、再生手術を施行します。骨の移植手術と一口に言っても症例に応じて様々な種類があります。足りない骨の量によって、移植する骨も、軽度~中程度までの量であればお口の中の顎から採取することができます。また、最近では人工骨(カルシウム系の素材)の利用も行っています。
サージカルガイドを利用した
安心・安全性の高い新しい治療
安心・安全性の高い新しい治療
サージカルガイドとは
CT撮影データとシュミレーションソフトウェアを組み合わせて、手術の前に骨の形態や質、神経の位置等を把握し、安全性の高い・安心な治療を計画します。
また、計画通りにインプラントを埋め込むために、患者様ごとにサージカル・テンプレート(手術用補助器具)を作製して使用します。
サージカルガイドを利用した
治療の流れ
1. CT撮影
CTで、立体的に神経、血管、骨などの様子を把握します。
骨の形や質、高さや幅には個人差があります。
また、骨の中には神経や太い血管が通っています。
2. コンピューター上で治療を計画
歯科医師はCT撮影データから得られた情報をもとに、神経や太い血管を避けながらインプラントの埋め込み位置を計画します。
埋め込むインプラントのサイズや、角度、深さ等をソフトウェアでシュミレーションします。
3. インプラント手術
治療計画に基づいてインプラントを埋め込むために、サージカル・テンプレートをお口に取り付けます。そして、インプラントを埋め込みます。インプラントを埋め込んだ日に仮歯をつけて帰宅できる場合もあります。
4. 最終的な歯の取り付け
インプラントと骨が結合している良好な状態を確認した後、最終的な歯を取り付けます。